ネットショップ・ECサイト・ネット通販の開業に必要な資格や届出、許認可手続きとは?
- ネットショップ:個人が無料で手軽に始められるもの。
- ECサイト:ネットショップより専門的な知識が必要なもの
- ネット通販:企業や経営者にしか始めることが難しいもの
Contents
ネットショップ・ECサイト・ネット通販の開業に必要な資格とは?
ネットショップやECサイト、ネット通販などネット販売事業を開業すること自体には、特に資格は必要ありません。
ただしネット販売事業では、食品や健康食品、酒類、医薬品、サービスなど実に様々なジャンルの商品が取り扱われます。
商品やサービスによっては、取り扱いに資格が必要なものもありますので、注意が必要です。
取り扱いに資格が必要な主な商品は次表の通りです。
表1、取り扱いに資格が必要な商品について
中古品の売買 |
必要な資格:古物商許可 必要な場合:古物を販売して継続的な利益を得る場合 申請場所 ネットショップ・ECサイト・ネット通販の所在地を管轄する警察署 |
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食品の販売 | 必要な資格:食品衛生責任者の免許
必要な場合
申請場所 ネットショップ・ECサイト・ネット通販の所在地を管轄する保健所 |
酒類の販売 | 必要な資格:一般酒類小売業の免許(※同一都道府県でのみ販売を行う場合)、通信販売酒類小売業免許
必要な場合:アルコール度1度以上の酒類の通信販売を同一都道府県内のみで行う場合 申請場所 ネットショップ・ECサイト・ネット通販の所在地を管轄する税務署 |
第二類医薬品 | 必要な資格:薬剤師の免許(※もしくは薬剤師の資格を持ったスタッフを選任)
必要な場合:第二類医薬品をインターネット販売する場合 |
ペット(犬や猫を販売する場合) | 必要な資格:動物取扱責任者(※もしくは動物取扱責任者の資格を持ったスタッフを選任) |
通販エキスパート検定
通販エキスパート検定とは、一般社団法人通販エキスパート協会が、通販業界従事者や通販会社、通販業界に関連する会社に就職希望の学生などを対象にした検定です。
通販に関する基礎知識や、品質管理、カスタマーサポート、関連する法律など通販に従事するために必要な知識やコンプライアンス意識を養うことができます。次のような種類の検定があります。
通販エキスパート検定三級 |
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通販エキスパート検定二級 |
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通販エキスパート検定準一級(法律編) |
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通販エキスパート検定準一級(ECマーケティング編) | 特に無し |
通販エキスパート検定準一級(CRM編) | 特に無し |
通販エキスパート検定一級(通販マネジメント編) |
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【参考元:一般社団法人通販エキスパート検定HPより一部引用 参考URL】
ネットショップ実務士
ネットショップ実務士とは、一般財団法人ネットショップ能力認定機構がネットショップ(EC)業界従事者やEC会社、ネットショップ(EC)業界に関連する会社に就職希望の学生などを対象にした検定です。ネットショップ(EC)業界の中では一番名の通った資格であり、実施企業一覧の中にはヤフーやDeNAなど業界のトップ企業が並んでいます。
ネットショップ(EC)業界の基礎知識から実務、ECサイトの企画から経営までネットショップ(EC)業界に必要な知識を学ぶことができる資格です。主に次のような階級が存在します。
表3、ネットショップ実務士の階級の種類と想定受験対象者
ネットショップ実務士補 |
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ネットショップ実務士L1 |
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ネットショップ実務士L2 |
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ネットショップ実務士L3(O/W/P/M) |
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【参考元:一般財団法人ネットショップ能力認定機構HPより一部引用 参考URL】
ネットショップマスター資格認定
ネットショップマスター資格認定とは講座を受講し、認定試験をパスした方が得られる資格です。ネットショップ(EC)業界従事者やEC会社、ネットショップ(EC)業界に関連する会社に就職希望の学生などを対象にした認定です。通販エキスパート検定やネットショップ実務士のように試験一発ではなく、各階級の講座を受講したあとに認定試験が行われるのが特徴です。
講座ではネットショップ(EC)業界で活躍する著名な方が講師をしていることも特徴です。主に次のような階級が存在します。
表4、ネットショップマスターの階級の種類と想定受験対象者
ベーシック検定 |
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3級 | ネットショップ運営担当の方 |
2級 | ネットショップ運営担当の方 |
1級< |
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【参考元:ネットショップマスター認定講座HPより一部引用 参考URL】
ネットショップ・ECサイト・ネット通販に必要な届出、許認可手続き
ネットショップ、ECサイト、ネット通販を立ち上げるだけであれば、開業したり、法人を立ち上げる場合の届出や許認可手続き以外は特に必要ありません。
しかし、先ほども紹介した通り、取扱商品やサービスによって資格や届出、許認可手続きが必要なものがあるので注意が必要です。
取り扱いに届出や許認可手続きが必要な商品は次の通りです。
表5、取り扱いに届出・許認可手続きが必要な商品と申請場所
食品(国内製品)の製造・販売 |
必要な届出・許認可
申請場所
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健康食品 |
必要な届出・許認可
申請場所
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医薬品 |
必要な届出・許認可
申請場所
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化粧品 |
必要な届出・許認可
申請場所
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輸入品 |
必要な届出・許認可
申請場所
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コンタクトレンズなどの医療機器 |
必要な届出・許認可 「高度管理医療機器」や「特定保守管理医療機器」の販売許可 申請場所 ネットショップ・ECサイト・ネット通販所在地を管轄する保健所 |
花火など |
必要な届出・許認可 火を扱う商品取り扱いに関する届出 申請場所 ネットショップ・ECサイト・ネット通販所在地を管轄する警察署 |
【参考元:「事業者必携 最新ネットビジネス・通販サイト運営のための法律知識」三修社より】
食品の製造・販売に必要な届出、許認可手続き
ネット通販で食品を取扱う場合には、商品によってネットショップ・ECサイト・ネット通販の所在地を管轄する保健所の「食品営業法に基づく営業許可・届出」が必要です。
国内製品の場合には、次のような商品は許可・届出は特に必要ありません。
- ペット用食品
- 手作りの漬け物(※地域によって許認可が不要な場合がある)
- 野菜、果物、キノコ類
- 加工物(料理、お菓子、冷凍食品、缶詰など)(※そのまま仕入れ転売する場合のみ許認可が不要。仕入れた後に商品を小分けにしたり、パッケージして販売を行う場合には許認可が必要となる)
また、国内商品の場合で、次のような商品は許可・届出が必要となります。
- 手作りの食品(※「食品衛生法に基づく営業許可」と「食品衛生責任者」の免許が必要)
- 手作りの漬け物(※地域によって許認可が必要な場合がある)
- 魚介類(生、干物、燻製)
- 乳製品
- 肉類
- 仕入れた後に手を加えた加工物(料理、お菓子、冷凍食品、缶詰など)(※仕入れた後に商品を小分けにしたりパッケージして販売を行う場合には許認可が必要)
健康食品の製造・販売するために必要な届出、許認可手続きとは?
健康食品も食品です。そのため、前述した「食品の製造・販売に必要な届出、許認可手続き」を参考に対応すれば良いと言えます。
また、健康食品のうち医薬品成分を含むものについては医薬品とみなされ、製造・販売には厚生労働大臣の承認と医薬品医療機器等法に基づく許可が必要になります。
また、次のような場合にも医薬品と見なされ、医薬品医療機器等法に基づく許可が必要になりますので、注意しましょう。
- 医薬品成分を含むもの
- 医薬品的な効能や効果を謳っているもの
- 医薬品的な形状をしているもの
- 医薬品的な用法、用量のもの
酒類の販売に必要な届出、許認可手続き
酒類のインターネット販売には、酒税法に基づく「通信販売酒類小売業免許」が必要になります。
2006年の法改正により、「通信販売酒類小売免許」を取ればアルコール度数が1%以上(酒税法の対象となるもの)で「品目ごとの課税移出量が、すべて3,000キロリットル未満の製造者の製造・販売する国産酒類」「輸入酒」に限り、ネット通販で販売することができます。
ただし、販売を同一都道府県内のみで行う場合には「通信販売酒類小売免許」に加えて「一般酒類小売業免許」が必要となります。
医薬品の製造・販売に必要な届出、許認可手続き
2014年6月12日より、一般医薬品をインターネットで販売できるようになりました。しかし、そのためには新しいルールを遵守し、専門家による適切な情報提供を行う前提で販売をしなければなりません。
インターネットで医薬品を販売するためには、次のルールを守る必要があります。
- 一般医薬品のインターネット販売は、薬局・薬店の許可を取得した有形の店舗が行う。
- 一般医薬品のインターネット販売は、注文を受けた薬局・薬店で、必要な資質・知識を持った専門家が行う。
- 一般医薬品のインターネット販売を行う場合には、HPに指定の項目を掲載すること
- 一般医薬品のインターネット販売を行う場合には、HPが厚生労働省のHPにURLを掲載する
- 医薬品の効果・効能を保証する口コミやレビューの掲載は禁止
- 店舗閉店後にインターネット販売のみを行う時間帯がある場合には、東京都が薬事監視を確実に行える仕組み(TV電話、電子メールによる写真の送付等)の整備が必要
- インターネット販売が可能な一般医薬品は次の通り
※要指導医薬品(ダイレクトOTC、スイッチ直後品目、毒薬、劇薬)及び医療用医薬品はインターネット販売できない。
- 専門家(薬剤師、登録販売者)が購入者の状況に応じて適切な情報提供を行う
【※参考元:東京都福祉保健局「インターネット販売による一般用医薬品の安全・安心を確保するために(インターネット販売の概要)」より 参考URL】
これらのルールを守る上で大前提として、医薬品の製造元(製造販売を行うメーカー)は、都道府県知事などの許可が必要です。
また、一般医薬品をインターネットで販売するだけであっても、「一般医薬品のインターネット販売は、薬局・薬店の許可を取得した有形の店舗が行う」というルールの遵守のため、実店舗を開設するための「薬局開設許可」「店舗販売業許可」をネットショップ・ECサイト・ネット通販所在地を管轄する保健所から受ける必要があります。
また、医薬品の販売形態には、大きく分けて次の3種類があり、そのどれにも当たらない販売形態として「特定販売」(※旧郵便等販売届)の届出をネットショップ・ECサイト・ネット通販所在地を管轄する保健所に行う必要があります。
- 店舗販売業(薬局販売業):店舗にて対面で医薬品を販売する
- 配置販売業:各家庭を訪問し、一般医薬品を販売する
- 卸売販売業:医薬品を他の販売業者や医療機関、企業などに販売する
つまり、一般医薬品をインターネット販売するためには、「薬局開設許可」「店舗販売許可」「特定販売の届出」を行わなければなりません。
また、許認可の他にも上記通り、守らなければならないルールがありますので、もし医薬品の販売を行う際には注意するようにしましょう。
化粧品の製造・販売に必要な届出、許認可手続き
他の国内メーカーの化粧品を販売する場合には許認可は特に必要ありません。
しかし、海外メーカーなど海外から輸入したブランド化粧品を販売するためには、化粧品製造販売許可が必要です。また輸入する場合には地方厚生局へ「化粧品輸入届出」を行う必要があります。
化粧品の中には「薬用化粧品」というものが存在します。これは法律上化粧品ではなく「医薬部外品」という扱いになります。
そのため、医薬部外品についての許可が別途必要になってきます。
輸入品の販売に必要な届出、許認可手続き
「食品(人の口に接する機会の多い食器やベビー用品なども含む)」や「動植物」、また「化粧品」を海外から輸入して販売する場合、次のような手続きが必要になります。
- 食品:「食品等輸入届出」と検疫手続き
- 化粧品:「化粧品輸入届出」
- 植物:検疫手続き
- 動物:「動物の輸入届出」と検疫手続き
動植物においては、海外から国内に有害な病原体や害虫、有害物質を持ち込まないために、すべて検疫手続きが必要となります。
また動植物は次のように輸入が禁止されているものも多く、規制も厳しいため細心の注意が必要です。
表6、輸入が禁止されている動植物の例
植物 |
・パフィオペディルム属のラン |
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動物 |
・サル類(テナガザル・チンパンジー・キツネザル・スローロリス) |
【参考元:植物防疫所公式HP、経済産業省HP「ワシントン条約規制対象貨物の輸入」より 参考URL】