ネット通販・ネットショップ・ECサイトに必要な「特定商取引法に基づく表記」の書き方
特定商取引法ってどんな法律?
特定商取引法とは、事業者と消費者の間のトラブルを未然に防ぐこと、そして悪徳業者から消費者を守ることを目的とした法律です。
主に「訪問販売」や「電話勧誘販売」「連鎖販売取引」「特定継続的役務提供」「業務提供誘引販売取引」「訪問購入」「通信販売」など事業者と消費者の間でトラブルとなりやすい業態が特定商取引法の対象となります。
ネット通販も「通信販売」にあたるため、特定商取引法を遵守しなければなりません。
ネット通販事業者に適用される主な項目
ネット通販事業者に適用される主な項目は以下の8つです。
第12条:誇大広告の禁止
第12条の3、第12条の4:未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止
第13条:前払式通信販売の承諾等の通知
第14条:契約解除に伴う債務不履行の禁止
第14条:顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為の禁止
第14条、第15条:行政処分・罰則
第15条の2:契約の申し込みの撤回または契約の解除
第58条の19:事業者の行為の差止請求
特定商取引ガイド
特定商取引法に基づく表記とは?
特定商取引法の第11条「広告の表示」によって定められた次の13項目を表示することが義務付けられています。
それが「特定商取引法に基づく表記」です。
- 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
- 代金(対価)の支払い時期、方法
- 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
- 商品(指定権利)の売買契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(返品の特約がある場合はその旨含む。)
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
- 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名
- 申込みの有効期限があるときには、その期限
- 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額
- 商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
- いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
- 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容
- 請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
- 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス
なぜ特定商取引法に基づく表記が必要なのか?
特定商取引法は先ほどご紹介させていただいた通り、事業者と消費者間のトラブルを未然に防ぐため、そして悪徳業者から消費者を守るための法律です。
では一体なぜ特定商取引法に基づく表記が必要なのでしょうか?
それは、通常の店舗販売の場合と比べてネット通販が「一体誰が運営しているのか?」顔が見えづらい取引であるからです。
また、その分コミュニケーションも希薄になります。店舗販売の場合であれば「返品などはお受付できませんが、サイズなどの確認はよろしかったでしょうか?」などと店員の方から聞いてくれますが、ネット通販の場合には、一方的にこちらが注文し、決済を行いますから「もし不良品が届いてしまったらどうしよう」と不安に思ってしまいます。
また、決済したはいいが本当に商品などが届くのかどうかも分からず不安に感じてしまうことだってあるでしょう。
このように弱い立場の消費者に対し「弊社はしっかりと運営者名や返品のポリシー、また代金の支払い時期や商品の引渡し時期などを開示していますから、安心して取引をしましょう」という意思表示が特定商取引法に基づく表記の役割であり、記載が義務付けられている理由です。
特定商取引法に基づく表記がなかった場合の罰則とは?
もし仮に特定商取引法に基づく表記がないままネット通販を行なってしまった場合、一体どのような罰則があるのでしょうか?
罰則については、特定商取引法の第14条(業務改善指示)、第15条(業務停止命令)に次のように記載されています。
以下の違反行為をした者は、主務大臣・都道府県知事の業務改善指示又は業務停止命令の行政処分を受けます。
- 広告内容に関する一定の表示義務又は誇大広告等の禁止に違反した場合
- 請求や承諾をしていない消費者に電子メール広告を送信した場合
- 電子メール広告の提供を拒否した消費者に電子メール広告を送信した場合
- 電子メール広告送信の請求や承諾の記録を作成・保存しなかった場合や、虚偽の記録を作成・保存した場合
- 上記の2又は3の場合に、その送信した電子メール広告において表示すべき事項を表示していない場合や、その広告中に誇大広告をした場合
- 顧客の意に反して、契約の申し込みや電子メール広告の提供の請求・承諾をさせようとする行為
具体的に行われた消費者庁による某ネット通販サイトに対する特定商取引に関する法律の規定に基づく取締まりのNews Releaseでは、違反業者に対して実際に次のような対応が行われた旨が記載されています。
- 特定商取引法上の規定に違反しているおそれがある部分について是正するように通知
- 1について1ヶ月を経過しても是正が確認できない場合は、通販サイトのURLや運営業者名を公表する可能性があることを通知
- インターネット接続サービスを提供するインターネット接続業者に対して、1、2を通知
- インターネット接続サービスを提供するインターネット接続業者に対して、消費者トラブルを防止するため、インターネット接続サービスの提供停止(サイトの削除)等の措置を講ずる旨の協力要請
特定商取引法に基づく表記の書き方
先ほど特定商取引法の第11条で義務付けられている13項目をご紹介しましたが、ここからはそれぞれ具体的にどのような内容について記載すべきなのかを解説していきます。
販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
ネット通販で販売する商品の価格、もしくはサービス(セミナーやコンサルティングサービスなど)提供などの対価について実売価格で表示します。
実売価格とは、メーカーやサービス元が決めた定価ではなく、実際にそのネット通販で消費者に販売する価格のことです。
例えば、とある商品を仕入れて販売する場合、メーカー希望価格(≒定価)が1,000円であり、実際にネット通販で販売する価格が900円であった場合には、900円が実売価格となります。
また、消費税の支払いが必要な場合には、消費税込みの実売価格を記載する必要があります。
例えば900円(税抜き)の商品の場合には、900円+税、ではなく972円(税込)という価格を掲載しなければならないということです。
実売価格と同時に送料も記載しておく必要があります。送料を記載しなければ「送料は販売価格に含まれる」と推測されてしまい、送料を請求できなくなってしまうリスクがあります。
「送料は実費負担」のような抽象的な表記ではなく、具体的に「送料は全国一律◯◯円です」と記載するのが望ましいと言えます。
代金(対価)の支払い時期、方法
ネット通販で販売する商品やサービスの代金をいつ支払うべきかを表示します。
例えば「代金振込確認後、1週間以内に商品を発送いたします」などの表記がこれにあたります。
また、支払い時期だけではなく支払い方法についても表示しなければなりません。
ネット通販の場合クレジットカード決済がメインだと考えられますが、銀行振込みや代引きなど、ネット通販側が消費者に要望する支払い方法についてしっかり明記しておく必要があります。
もし、支払い方法が複数ある場合には、複数を列挙するのが望ましいと言えるでしょう。
商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
注文を受けた商品やサービスをいつ、どれくらいの期間で提供するかを明記しておく必要があります。
例えば商品の支払い方法が銀行振込の場合には「代金振込確認後、5日以内に商品を発送いたします」などの表示がこれにあたります。
商品(指定権利)の売買契約の申込みの撤回又は会場に関する事項(返品の特約がある場合はその旨含む。)
ここでは、契約解除や申込みの撤回、返品などに関して表示します。
通信販売の場合クーリング・オフ制度(※)は適用されませんが、特定商取引法第15条には次のように、8日間までは返品可能という規定が定められています。
「特定商取引法」第二章第三節第十五条の二の一
つまり、返品に関しての希望がある場合には、ここで返品に関してのポリシーをしっかりと明記しておく必要があるということです。
ここには返品を受け付ける場合の送料負担に関しても明記することが可能です。
事業者の情報
ネット通販では、サイト内に事業者に関する情報の掲載が義務付けられています。
またこれらの情報は原則として画面の上側の消費者がわかりやすい位置に表示する必要があります。
法人の場合 |
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個人事業主の場合 |
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申込みの有効期限があるときには、その期限
ネット通販において商品やサービスへの申込みの有効期限があれば、これを表示します。
例えば「セミナーの申込はセミナー開催10日までに行なってください」などがこの記載にあたります。
瑕疵担保責任についての定めがある場合にはその内容と金額
瑕疵担保責任とは、商品に隠れた瑕疵がある場合に負う、販売者の責任のことです。
「返品に関する特約」と同様に、瑕疵担保責任について特記事項がある場合には記載しておく必要があります。
ただし「いかなる欠陥においても販売元は責任を負いかねます」などの記載は無効となります。
また、無記の場合には民法に基づいて処理されることになります。
その他の情報
その他、下記1〜4の項目について当てはまるものがあれば記載する必要があります。
- いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
- 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容
- 請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
- 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス
特定商取引法に基づく表記の記載例
フォーマットなどは会社によってそれぞれですが、これまでに説明してきた表示しなければならない項目について「特定商取引法に基づく表記」というページに次のように記載していきます。(※あくまで一例です)
表7、特定商取引法に基づく表記の記載事例
ショップ名 | ネット通販・ECサイトの教科書 |
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販売業者 | 株式会社ネット通販・ECサイトの教科書 |
販売責任者 | 通販 太郎 |
所在地 | 〒ooo-oooo ooooooooooooooooooo |
電話番号 / FAX番号 | xxx-xxx-xxxx / ooo-ooo-oooo |
メールアドレス | 〜@〜.jp |
ホームページ | URL |
取扱製品 | 健康食品 |
許認可・資格 | 無し |
販売価格 | 各商品ページをご参照ください |
商品代金以外の必要料金 |
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商品お届け時期 | 入金確認後、直ちに商品を発送いたします。 ※品切れなどにより納期が遅れる場合には、メールにて事前にご連絡させていただきます。 |
お支払い方法 | クレジットカード、銀行振込、代引き |
お支払い期限 | ご注文の翌日より1週間以内にお支払いください。 ※1週間以内に入金が確認できない場合にはキャンセルとさせていただきます。また、代引きの場合には商品のお届け時に運送会社へお支払いください。 |
返品に関して | 商品の不良があった場合のみ交換をいたします。キャンセルは注文後3日以内に限りお受付いたします。 |
返品期限 | 商品出荷より7日以内にご連絡ください。 |
返品送料 | 弊社が負担いたします。 |
返品送料 | 弊社が負担いたします。 |