ネット通販を始めるなら知っておくべき景品表示法
ネット通販を始める場合、商品やサービスの周知をするために必ず広告を打ちます。
その際に注意しておかなければ、大きな損失につながってしまうのが景品表示法です。
消費者庁の発表によれば、2017年度において、景品表示法違反によって企業などに請求された課徴金額は総額3.9億円にものぼり、景品表示法違反の再発防止命令(措置命令)が50件、課徴金納付命令が19件、是正措置指導が179件と、前年度よりも多くなっているそうです。
このように年々景品表示法の規制は厳しくなってきています。
誰もが知る大企業であっても、景品表示法に違反するとして広告などが差し止めになったりするケースがあるので、これからネット通販を始めるのであれば、特定商取引法と共に、絶対的に注意すべき法律と言えます。
今回はそんな、ネット通販を始めるならば知っておきたい景品表示法について基礎知識から注意すべきポイントまで、詳しく解説いたします。
Contents
景品表示法とはどんな法律?
景品表示法とは、不当な表示や不当な景品から消費者を守る法律です。
私たちは何か買い物をする際に「お客様満足度No.1」や「通常ならば29,800円のところ19,800円!」など商品自体ではなく、その商品についている表示に反応して行動してしまうことがよくあります。
100%事実だけが書かれていれば良いですが、100%事実が記載してあるものばかりとは限りません。
誇大な表現や「これを購入したらもれなくこれをプレゼント!」など景品などを使って、あたかも本来よりもちょっと商品やサービスを良く見せようとしている業者はたくさんいます。
そのため、嘘とも知らずにそういった表示を信じて購入し、実際に到着した商品を見たり、サービスを受けたりして不利益を被る可能性があります。
こういった表示や景品から消費者を守る法律が景品表示法なのです。
逆にこれから、ネット通販を始めようとするのであれば、必ず守らなければならない法律です。
景品表示法は主に「不当な表示」と「不当な景品」の2つを禁止しています。
不当表示の禁止
不当表示とは、商品やサービスの本来の品質、価格を過度により良く見せようとする表示のことです。
それが本当の事実であれば良いですが、調査も何もしていないのに「お客様満足度No1」「顧客満足度94.7%」と謳ったり、本当の価格を良く見せるために「今なら29,800円→19,800円!」と高い金額をわざとつけて、安く見せたりするなどが典型的な不当表示です。
事実を事実として述べるのではなく、消費者に誤解を招くような、消費者が騙されてしまうような過度な表現で、商品をより良く見せるような表示を景品表示法では禁止しています。
また、本来入っていないはずの成分や食材、などを記載するのも不当表示にあたります。
不当表示は「優良誤認表示」「有利誤認表示」「その他誤認されるおそれのある表示」の3種類に分かれています。
優良誤認表示
優良誤認表示とは実際の商品の品質、や規格などよりも著しく良いものであるとする表示のことです。
消費者庁の発行している『事例でわかる景品表示法』によれば、優良誤認表示とは次のように定義されています。
景品表示法では、商品やサービスの品質、規格などの内容について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示を優良誤認表示として禁止しています。
- 品質:商品に関する成分や属性を指し、前者には、原材料、純度、添加物などが、後者には、性能、効果、鮮度などが含まれます。
- 国、公的期間、民間団体などが定めた一定の要件を満たすことで自動的にまたは認証などを経て表示することができる等級などをいいます。
- その他の内容:商品・サービスの品質や規格に間接的に影響を及ぼすものも含まれ、例えば、原産地、製造方法、受賞の有無、有効期限などをいいます。
【引用元:消費者庁『事例でわかる景品表示法』】
分かりやすく言えば、「とてもいい商品ですよ!」と表示されているけれどもそうではない表示のことを優良誤認表示と呼びます。
有利誤認表示
商品やサービスの価格や取引条件などを著しく良く見せる表示を有利誤認表示と呼びます。
例えば、「通信料金の安さ業界No1!」と書いてあるが実際はそうでなかったり、「有効成分◉◉が他社比1.5倍配合!」など書かれているが実際は入っていなかったり、実際よりも高い価格設定にしておいて、「今なら5割引!」などと謳って本来であれば定価なのに安くなっているように見せかけたりするような表示などがそれにあたります。
消費者庁の発行している『事例でわかる景品表示法』によれば、有利誤認表示とは次のように定義されています。
景品表示法では、商品やサービスの価格などの取引条件について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく有利であると一般消費者に誤認される表示を有利誤認表示として禁止しています。
【引用元:消費者庁『事例でわかる景品表示法』】
その他誤認されるおそれのある表示
景品表示法で規制の対象となっている表示は、優良誤認表示や有利誤認表示だけではありません。
消費者に誤認される恐れがある場合には次の6つの表示も規制対象となります。
表示名 | 概要 |
無果汁の清涼飲料水等についての表示 | 無果汁・無果実もしくは果汁又は果肉の量が5%未満の清涼飲料水、乳製品、アイスクリームなどについて、「無果汁・無果肉」であること又は果汁もしくは果肉の割合(%)を明瞭に記載しない場合、以下の表示は不当表示となります。
|
商品の原産国に関する不当な表示 | 一般消費者が原産国を判別することが困難な場合、以下の表示は不当表示となります。
|
おとり広告に関する表示 | 一般消費者を誘引する手段として行う以下の表示は不当表示となります。
|
※ネット通販に関わらない項目は除いている。
【引用元:消費者庁『事例でわかる景品表示法』】
景品類の制限及び禁止
景品表示法では、不当表示の他に、不当な景品についてもその景品の金額を規制しています。
景品類とは、お客様を呼び込むために、つける物品や金銭などの経済上の利益のことを指します。
例えば、「◉◉円以上のお買い上げで◉◉くじが引ける!」やデパートや商店街の福引などで当たる景品の上限金額などを景品表示法では規制しています。
なぜなら、例えば「500円以上のお買い上げで100万円のロレックスが当たるくじができる!」と著しく高い景品額が表示されていると、「買ってみようかな!」と景品によって購買意欲を感じてしまう消費者が出る可能性があります。
こういったことが続くと、商品やサービスよりむしろ「景品がいかに良いか?」の競争になってしまい商品やサービスがおろそかになり、最終的には消費者が不利益を被る可能性が出てきます。
こういったことを防ぐために景品表示法では「不当な景品」についても規制しています。
「不当な景品」は次の「一般懸賞」「共同懸賞」「総付懸賞」の3つに分かれています。
一般懸賞
一般懸賞とは、「◉◉円お買い上げでくじを1回引ける!」など商品やサービスの利用者に対して偶然性や特定行為の優劣などによって景品類を提供することを指します。
そういった一般懸賞の景品については次表1のような景品の限度額が規制されています。
表1:一般懸賞の景品の限度額
懸賞による取引価額 | 一般懸賞における景品類の限度額 | |
最高額 | 総額 | |
5,000円未満 | 取引価額の20倍 | 懸賞に係る売り上げ予定総額の2% |
5,000円以上 | 10万円 |
【引用元:消費者庁『事例でわかる景品表示法』】
共同懸賞
共同懸賞とは、一般懸賞と違い業界であったり、企業の複合体であったり、事業者が共同で景品類を提供することを指します。
例えば、商店街など商店の集まりが提供する福引き、地域のお祭りなどのくじ引きなどがこれにあたります。
そういった共同懸賞の景品については次表2のような景品の限度額が規制されています。
表2:共同懸賞の景品の限度額
共同懸賞における景品類の限度額 | |
最高額 | 総額 |
取引価額にかかわらず30万円 | 懸賞に係る売上予定総額の3% |
【引用元:消費者庁『事例でわかる景品表示法』】
総付景品
懸賞など偶然性によらず、商品やサービスを利用されることによって景品類を提供することを指します。
例えば、「購入者全員にトイレットペーパーをプレゼント!」「購入者先着100名様にスペシャルプレゼント」などがこれにあたります。
こういった総付景品の限度額は次のように規制されています。
表3:総付景品の限度額
総付景品の限度額 | |
取引価額 | 景品類の最高額 |
1,000円未満 | 200円 |
1,000円以上 | 取引価額の10分の2 |
【引用元:消費者庁『事例でわかる景品表示法』】
景品類にあたらないものは?
- 商品の販売・使用及びサービスの提供に必要な物品
- 見本及び宣伝用の物品
- 自店、他店共通で使用できる割引券、開店披露や創業記念などで提供される記念品
【引用元:消費者庁『事例でわかる景品表示法』】
ネット通販では具体的にどのようなポイントに注意すればいいの?
ポイント1:根拠のない虚偽の数字を入れない
- 顧客満足度99.1%
- 業界売上No1
- およそ89%の方が効果があると回答!
- 他社比1.6倍!
- リピート率98%
ポイント2:事実に反する表示、誤解される表示をしない
- 今日から10日間限定!通常29,800円のところ、19,800円に特別割引!
根拠のない商品・サービスの効果・効能の記載
返品方法の不明瞭表示
- 商品にご不明な点がある場合にはお気軽にご相談ください
例外を表示しない場合(打ち消し表示)
景品表示法に違反するとどうなるの?
景品表示法に違反すると、次の段階で行政処分が行われます。
- 調査:消費者庁が調査を行います。
- 行政指導:調査結果に応じて改善指導が行われます。
- 措置命令:調査結果により、程度が重いと判断された場合には広告停止や再発防止策などを検討するように命じられます。
- 課徴金:調査結果により、程度が重いと判断された場合国に金銭を納付するように命じられます。罰金のようなものです。
最近では課徴金が課せられるケースも増えてきていますので、景品表示法違反には十分に注意しましょう。
大手ネット通販会社でも違反してしまうことがあるので要注意!
誰もが知る大企業であっても、消費者庁から措置命令や課徴金など重い行政処分が行われているケースが増えてきています。
それだけ行政側も規制を強化しているということです。
そのためこれからネット通販を始めようという方は、十分今回の記事を読み、景品表示法についてしっかり知った上で始めるようにしましょう。